Hero+ ~福島の被災地を巡る中高生交流スタディツアー~
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(この活動は9月2日(土)いわき民放新聞夕刊1面に掲載されました。)

2023年8月25日(金)、26日(土)の1泊2日、福島の被災地を巡る中高生交流スタディツアーを実施し、関東12名、福島3名の中高生が交流しました。

<1日目>

東日本大震災・原子力災害伝承館見学

 まず初めに、原子力災害と復興の記録や教訓を未来へ継承する伝承館の見学をしました。
関東の中高生は、震災当時の出来事、原子力発電所が爆発した原因と影響を詳しく知りたいと施設の方を自ら捕まえて質問をしていました。
「1時間の見学では到底足りない、もっと時間が欲しかった」というほど、とても熱心に一つ一つの資料を見ていました。

福島県の高校生は、当時、自分の父親が消防士として対応をし「生きて帰れるかわからない」と母親にメールを送った話をしてくれました。

震災遺構・浪江町立請戸小学校見学

 倒壊を免れた校舎に刻まれた脅威と、全員避難することができた経験を伝える請戸小学校を県学校を見学しました。

 

中高生たちは被災した校舎を実際に見ることで地震と津波の脅威を感じ、当時の在校生が後に綴った文章を見ながら涙が出そうになったと話していました。

◆ディスカッション   

 まず、福島県ふたば未来学園高校の3人がそれぞれ話をしました。
震災当時4歳だったので記憶が曖昧であること。しかし、被災者の話を聞いて演劇で伝える経験を通して自分自身も今震災について知ることができてよかったと思っていること。震災を知る最後の話者としての使命感があること、また、風評被害も差別も偏見も一人ひとりがちゃんと知ろうと思えば少しでも少なくはなるのではないかという話をしてくれました。

 

 次に、8月24日に海洋放出された原子力発電所の「処理水」に関して、復興庁の動画を見たり、政府の対応、漁業協同組合連合会の意見、世界各国の反応について学びました。

 

 最後に、3班に分かれて①伝承館や請戸小学校を見学した感想②処理水について③自分たちができることについてディスカッションをしました。

①伝承館や請戸小学校を見学した感想

「具体的に知らなかった。被災者の映像で今までの人生を悔いた。」

「地震の記憶はあるけど、原発の被害状況を全然知らなかった。興味、関心を持つことが大事だと思った。」

「今こうしてること当たり前じゃない。生きてることも奇跡なんだと感じた。言葉に表せない使命感を感じた。福島に残っている人は強く生きてるということを皆に伝えたい。」

②処理水について

​​「処理水の報道に、漠然と危ないと捉えてしまっていた。情報の受け手側として、事実がどこまでかをしっかりと確認することが必要だと感じた。」

「知るきっかけがないから、学校の授業でも取り上げるべきなのではないか」

③自分たちができること

「わからないことから風評被害がある部分もあると思う。自分から関心を持って調べていくことが大切だと思った」

「福島の魚を食べる!!」

<2日目>

◆海のアクティビティ(ボディーボード・ビーチバレー)

 いわき海浜自然の家の管轄の海辺で思いっきり遊びました。四倉海岸は、透き通った海に流れる金色の砂が輝いてとても綺麗でした。
波が崩れる時に乗るボディーボードは繰り返していくうちにだんだんとうまく乗れるようになりました。

 ビーチバレーでは飛び込んでレシーブをしても水に浮くので思い切って飛び込みながら、ボールを繋いでいました。

(中国語を勉強している高校生の感想)
「偶然にも処理水放出の2日後に海に入り、とても良い経験をしたと思います。実際に入った私達の言葉は非常に説得力のあるものだと思います。なので、中国の方などに伝えたいです。」

◆クラフト制作(貝殻の壁飾り)

 海のアクティビティではなく室内を選択した中高生は貝殻の壁飾りを熱心に制作しました。

◆太鼓体験

 最後のプログラムは、榎内さん(team風童の代表)による和太鼓体験でした。

 

 思いっきり太鼓を叩きながら楽しい時間を過ごしたあとは、語り部である榎内さんよりお話を聞く時間を持ちました。
当時、東京電力(株)福島第一原子力発電所で勤務をし、震災後、避難先での対応をする中で、住民の悲痛や怒りを直接受けてきたこと。月日が経過するほど、住民の喪失感、絶望感、孤独感が増していると感じ、元気に、笑顔になって欲しいと和太鼓教室を始めたこと。今後はふる里に戻った住民と避難先の住民を繋いでいきたいと話してくださいました。
そして、「最後に、先生というのはどのように生きていけばいいのか教えてくれる人だ。自分の個性、価値観を大事にして、先生とのつながりを大切にしてほしい。」と未来に向かう中高生にメッセージを伝えてくださいました。

◆中高生たちの感想

(中学1年生 女子)
このプログラムに参加するまでは、あまり福島について深く知らなかったけれど、震災の悲惨さなどをはじめて深く考えて、自分が知らなかったこともたくさん知ることができたので、とても良い経験になりました。

(高校1年生 男子)
最初は課題でとかのすごいやらされている感を持ちながらこのツアーに参加していたと思うけど、このツアーを通して東日本大震災は地震と津波だけが被害ではなくて、放射線によって家に帰れず、埼玉まで避難してきたなどの話を聞いたり地元の人たちの話を聞いたりしてから、この問題をただ事で収めてはいけないなと感じた。このツアーから何かワークショップとかに繋げるきっかけになったと思う。

(高校2年生 女子)
同年代の方が関心を持ってくれて、福島だけ、一人じゃないんだということが実感できた。

(高校2年生 女子)
処理水の海洋放水というタイミングで福島に来れたことが本当によかった。ただ資料館に行くのではなくて、福島の高校生と同じ目線で友達として話せたことは本当に貴重だと思う。

(高校3年生 男子)
処理水についてのことを話していただいたことがとてもよかったです。あの話を聞かなければ理由もわからずにモヤモヤを抱えて福島に対しても悪い印象を持ってしまっていました。 また福島の高校生達と話せたことが本当に刺激的でとてもよかったです。自分が福島に対して漠然と危ないと思っていて興味を持っていなかったけど、当事者達は自分たちがどう思っているのかを気になっているのだなということを感じ、申し訳ない気持ちになりました。これから自分なりに興味を持って調べていこうと思いました。

(高校3年生 男子)
震災についてもっと深く知るために地元の農業や漁業に携わっている方に直接話を聞いたり、津波の被害に遭ったところをもっと見たりして理解を自分なりに深めたい。

◆最後に

 8月24日に処理水の海洋放出が開始されたタイミングということもあり、海でのアクティビティに関して不安視する声もありました。それを受けて、「正確に知ること」「現地に来て実感すること」が大切なのではないかということを一層考えるようになりました。
東日本大震災から12年が経ち、現地で直接見る震災の爪痕は少なくなりました。しかし、風評被害という問題は今もあります。
 福島県で作られた電力は福島県民以外の多くの人が享受してきました。享受した者としても「他人ごと化」することなく、正しく知ること、自分にも何かできることはないか考えてみることだけでもできたらいいのではないかと思います。
 中高生たちが、このツアーを通して、目で見て、耳で聞いて、心で感じたことを持って、それぞれの人生の糧にし、未来を創り出す力になれば幸いです。

(文責 堂)

この活動は子ども夢基金助成を受けて行われました。