ブラインドサッカー体験会を開催!
Auniversityは8月5日、ブラインドサッカー体験会を開いた。大学生や社会人を中心に、小学生からこの日67歳の誕生日を迎えたおばあちゃんまで老若男女24人が参加。ブラインドサッカー日本代表チーム主将の川村怜さん、同チームでコーチを務める上林知民さんのお二人をお迎えし、ブラインドサッカーのやり方を教えていただいた。
ブラインドサッカーは「視覚障害者5人制サッカー」の通称で、全盲~ほぼ全盲の選手がプレーする。障害者スポーツの中でも唯一、直接人と人がぶつかる激しいスポーツだ。フィールドでは鈴のような音が鳴る特殊なボールを使い、「ボイ!ボイ!※」と声を掛け合いながら、音や声の情報を頼りにプレーする。
(※Voy=スペイン語で「行く」という意味。衝突防止のため、ボールを奪いに行く選手が出す掛け声)
見えない中で走り、蹴る練習
体験会ということで、試合をたくさんするのかと思いきや、7割以上の時間は「目隠しで、走る・蹴る」という動作を体験し慣れるための練習だった。しかしこれが本当に難しい。通常、人は視覚情報が8割だというから、残りの2割から得られる情報に神経を研ぎ澄ませなければならない。
川村選手ら全盲の選手たちは、音の情報から空間認知をしているという。その場で見せていただいたデモンストレーションでは、「見えている」かのような、迷いのない走りやパスの正確さに、一同驚き歓声を上げた。川村選手によると「(視覚か聴覚かという)情報源は違うが、認識している空間のイメージは、皆さんのイメージとかなり近い」のだという。
練習は、上林コーチの指導と川村選手のデモンストレーションを見せてもらいながら進行した。まずアイマスクをした状態で走ることから始めた。「見えない」「ぶつかるかもしれない」、そんな恐怖心から、みな恐る恐る走りはじめた。
次にしたのは、目隠しでフィールドを走る練習だ。2人一組になって、前の人だけアイマスクをし、後ろの人が肩を持って誘導したり指示をしたりと、いわば二人羽織のようにして走った。みな、一人で走っていたときよりもスムーズに走れたようだ。
次に、前方10mほどのところに人が立ち、手を叩く音や掛け声を頼りに、目隠しをして走る練習……と、走ること約30分。ようやく、ボールを使った練習に入った。
ドリブルは普通のサッカーと少し異なる。前方に蹴るのではなく、常に足の近くにボールをおき、右足と左足の間を行き来させるようにして、小刻みに交互に蹴りながら進む。
目を開けた状態でドリブルの練習をして感覚をつかんだら、目隠しをしてやってみるのだが、やはり同様にはできない。一度足から離れたら、もうどこにボールが行ってしまったのかわからなくなってしまうのだ。目いっぱい足を延ばして周囲を探したり、仲間の指示をもとに必死でボールを探す。
パスの練習もどこに来るのか見えないから大変だ。「いくよ!」とだけ声をかけても、どこで構えればよいのかがわからない。正確に、「右足のほうに蹴るよ」「正面に行ったよ」と表現してこそ、パスを受けることができた。ブラインドサッカーでは、正確なコミュニケーションが必要だ。
最後に、いよいよ試合だ。再び「二人羽織」となってチームに分かれ、川村選手も加わった。みな、これまで学んできたパスやドリブルの技術、そして二人羽織で走る信頼感を頼りに走った。川村選手も、通常よりも大勢の声が反響し、音の情報がつかみにくい中にもかかわらず、応援者の声がする方向からゴールの位置を計算するなど冷静に情報を処理し、正確なドリブル、パスを繰り出した。
正確なコミュニケーションと信頼関係がカギ
ブラインドサッカーは、ボールの音の情報と共に、「仲間とのコミュニケーション」が鍵を握るスポーツでもある。 川村選手がチームメイトとのコミュニケーションをとる上で気を付けていることは、「使う言葉を定義づける」ことで認識を共通のものにすることだという。また、自分が蹴ったボールが実際に思った通りの方向や強さで届いたのか、思ったようなプレーができていたのか、必ずフィードバックを聞いて修正していくのだという。この作業を丁寧に繰り返したことで、あの精密なパスが作り上げられたようだ。
「ブラインドサッカーは、目が見えるガイドやゴールキーパーと、見えないフィールドの選手が協力し、共同作業していくもの。チームワーク、信頼関係が本当に重要な競技」(川村選手)だという。見えない人にとってはどういう声かけが必要なのか、そこまで考えてコミュニケーションをしていて、難しいと同時に奥深い。
こうした話を聞きながら、参加者の一人は「自分がいかに視覚に頼って(言葉の)コミュニケーションをいい加減にしていたのか気づけた」と話してくれた。みな、ブラインドサッカーを実際に体験して気づき、感じたことや、最先端で活躍する選手の話を聞きながら、普段の生活の中でも活かせるものを一つでも多く学びとろうとしていた。
川村選手と上林コーチは終始笑顔で共にしてくれ、さまざまな気付きを与えてくれた。川村選手は最後に、「試合を生で観たら、ものすごい迫力です。ぜひ見に来て僕のプレーを見に来てください。ゴールを決めて、お答えしたいと思います!」と、ブラインドサッカーの魅力と意気込みを伝えてくれた。
2020年東京パラリンピックでは、大勢のファンで観客席を埋めて応援したい。