「ゴールデン・スポーツイヤーズ」とあなたはどうかかわりますか?/師岡文男氏
「ゴールデン・スポーツイヤーズ」とあなたはどうかかわりますか?/師岡文男氏

「ゴールデン・スポーツイヤーズ」とあなたはどうかかわりますか?/師岡文男氏

NPO法人Auniversity(エイユニバーシティー)は2019年8月5日(月)、師岡文男上智大学名誉教授をお迎えし、「ゴールデン・スポーツイヤーズ」とのかかわり方をテーマにセミナーを開催した。

日本では今年から3年連続で国際メガスポーツイベントが開催される。東京オリンピック・パラリンピックまで約1年と迫り、関心の高まりからか、週の始めで猛暑が続いているにもかかわらず、学生から社会人まで多くの人が集まり、文京区シビックセンターの50人の会場はいっぱいになった。

 

師岡氏は、オリンピック・パラリンピック研究、国際スポーツイベント研究、生涯スポーツ学が専門。世界最大の国際競技団体の連合組織である国際スポーツ連盟機構(GAISF)の理事を日本人で初めて務めた人物だ。現在はスポーツ庁に参与し、世界フライングディスク連盟理事、日本フライングディスク協会会長、日本オリンピック委員会(JOC)総務委員、日本ワールドゲームズ協会執行理事など32団体の役員を務めている。

 

当日は多忙なスケジュールの中でお越しいただいたにもかかわらず、とても気さくで和やかな雰囲気で講演してくださった。

 

◆世界が日本に注目する3年間

師岡氏は「戦後の1964年に東京でオリンピックを開催したことが奇跡だ」と語った。焼け野原だった1945年からわずか19年でインフラを整え、国際スポーツ大会を開催することができるようになったからだ。

日本はその年からパスポート取得が可能になり、それまでは海外に触れる機会はなかったという。当時10歳だった師岡氏は、オリンピック参加国の国旗を見て「世界にはこんなにもたくさんの国があるのか」と、大変興味を抱いたそうだ。

 

今回の講演会タイトルにもなっている「ゴールデン・スポーツイヤーズ」とは、今年2019年の「ラグビーワールドカップ」、2020年「東京オリンピック・パラリンピック」、2021年「ワールドマスターズゲームズ関西」と、国際メガスポーツイベントが開催される奇跡の3年を意味する。

 

今年、アジアで初開催となるラグビーワールドカップは、夏季オリンピック、FIFAワールドカップと並ぶ世界三大スポーツイベントの一つと言われており、世界中が日本に注目する。

 

また、2021年にアジア初として開催されるワールドマスターズゲームズ2021関西は、概ね30歳以上のスポーツ愛好者であれば健常者でも障がい者でも誰でも参加することができる生涯スポーツの国際総合競技大会だ。

 

この期間は、スポーツに対して多くの人々に関心を持ってもらうチャンスであり、スポーツ庁としてはゴールデン・スポーツイヤーズを通して社会に変革を起こしたいという。

 

◆スポーツには人生を変える力がある

そもそも「スポーツ」の語源はラテン語の「デポルターレ」という単語で、「運び去る、運搬する」という意味から「日常からの気分転換、楽しみ」といった要素を指すようになったとされている。

つまり、「スポーツとは普段と異なることに心を通わせることだ」という。

音楽が嫌いな人はいないし、スポーツ、音楽、芸術は人間にとって絶対なくてはならないものである。師岡氏は「人間には考える力、自分で自分を楽しませる能力があり、スポーツで人生を変えることができる」と語った。

 

また、オリンピックは、世界206か国のアスリートや観客が一同に集まるだけではなく、日本を世界中に発信することができる機会だという。インターネットの普及によって電気の通ってないアフリカでも太陽発電を使ってパソコン越しにオリンピックを見ることができる時代になった。20~30億の人が東京2020年オリンピックの開会式を見ることになるだろうと言われている。

 

◆1位になることだけが大事なのではない

アスリートは勝ち負けで評価されるが、オリンピックでメダルを取らない国は82か国もある。師岡氏は、「オリンピックは1位になることだけが大事なのではなのではない、国を称えるためにやっているのではない」と強調した。

 

オリンピックの精神であるオリンピック憲章は、近代オリンピックの創始者クーベルタンが提唱した「オリンピズム=“生き方の哲学”」を根底にしている。より良く生きるために心と体を鍛えること、肌の色や話す言葉の違いに関係なく平和な世界を築くことについて書かれているのだ。

 

最後に、師岡氏は共生社会を作っていくことの重要性を話した。日本の殺人事件の半分は親子間によるものだという。豊かになった一方でコミュケーションを取らなくても生活できるようになってしまった現代。「スポーツは必ず自分の格好悪い姿を相手に見せることになるが、それを受け入れ、共通体験を一緒に作ることができるものだ」と語った。

 

参加者から「オリンピック、スポーツに対する価値観が変わった」「これからの日本のビジョンを感じる貴重な体験となった」「もっと時間が欲しかった!第2弾を開催して欲しい」とコメントをいただくほど興奮が冷めないまま、講演会は幕を閉じた。

 

ゴールデン・スポーツイヤーズは、各個人だけでなく、拡大してみると日本に大きな変革を与える機会になるのではないだろうか。その機会をさまざまな人が掴むことができるよう、これからもAuniversityはスポーツ、芸術、復興を軸にした活動を行っていく。